「好き」と言わない選択肢
あれから、二年……
「おはようございます」
私は変わらず、第三企画部に所属している。変わった事といえば、任される仕事も増えてきて、忙しい日々を熟している。そして、この春から岸本リーダーが、第三企画部の部長になった。
自分の席に座り、パソコンを開いた。メールチェックをし、急ぎの案件が無いか確認をはじめると、
「おはよう。はじめるわよ」
部長の声に、パソコンから目を離して、顔を上げた。
うん?
誰?
見たことある顔が、部長の横に立っていた。一瞬にして、部署内がざわつき出した。
「本日付で異動になりました、木島遥です。ご無沙汰してます。」
部長の横で深々と頭下げたのは、間違いなくあの木島遥だ。
「主任の木島遥君よ。皆も知っているとおもうけど、二年ぶり本社に戻ってきました。大阪でかなり鍛えられたようだから、楽しみね。」
「おおっーーーー」
拍手が巻き起こった。私も、とりあえず手を叩いた。
彼がちらりとこちらを見た気がしたが、なんとなく目を逸らせてしまった。
「一段とカッコよくなって帰って来た気がしない?」
「本当に…… なんか他の男性社員が色あせて見える…… はぁーカッコいい」
事業部の女子社員達が、ため息を漏らしはじめた。
勿論私は、そんな会話に入る事はせず、自分の席についた。
別に気にする事なんてないよね? 二年前、偶然一緒に飲んで、ちょっと言い合いをしただけだ。それに、向こうだって、もう覚えていないかもしれない。
仕事に気持ちを切り替えよう。今日の段取りを確認する。
資料を取るために手を伸ばして顔を上げると彼の姿が目に入った。彼の席が、私の席からしっかりと見えてしまう位置に陣取っている。
なんだかやりにくい。席替えとかないだろうか?
取り合えず、パソコンの画面に目を向け、視野を広げないようにした。
社内の挨拶周りから戻って来た彼の部長と打ち合わせをしている声が、耳の周りをランニングしている。
気にする必要はないと、自分に言い聞かせたのだが……
「橋本さん」
気付けば、彼がデスクの横に立っていた。
「はい?」
一応顔を上げた。あー二年間と変わらない整った顔立ち。だが、一本筋の通ったような、凛々しさを感じる。
「午後、外部の発注先に挨拶に行きたいんだけど、同行できますか? 急で申し訳ないのですが…」
申し訳なさそうではない表情の彼がこちらをみている。
「えっ。あっ……」
何と返事をすれば良いのだろうか?
「木島君。外回りは私が一緒に行くわ。ちょうど、紹介したいクライアントがいるのよ」
部長の言葉に、ほっと胸を撫で下ろした。彼に、軽く頭を下げ、またパソコンの画面に目を戻した。
彼が、不思議そうに首を傾げたのが分かった……
「おはようございます」
私は変わらず、第三企画部に所属している。変わった事といえば、任される仕事も増えてきて、忙しい日々を熟している。そして、この春から岸本リーダーが、第三企画部の部長になった。
自分の席に座り、パソコンを開いた。メールチェックをし、急ぎの案件が無いか確認をはじめると、
「おはよう。はじめるわよ」
部長の声に、パソコンから目を離して、顔を上げた。
うん?
誰?
見たことある顔が、部長の横に立っていた。一瞬にして、部署内がざわつき出した。
「本日付で異動になりました、木島遥です。ご無沙汰してます。」
部長の横で深々と頭下げたのは、間違いなくあの木島遥だ。
「主任の木島遥君よ。皆も知っているとおもうけど、二年ぶり本社に戻ってきました。大阪でかなり鍛えられたようだから、楽しみね。」
「おおっーーーー」
拍手が巻き起こった。私も、とりあえず手を叩いた。
彼がちらりとこちらを見た気がしたが、なんとなく目を逸らせてしまった。
「一段とカッコよくなって帰って来た気がしない?」
「本当に…… なんか他の男性社員が色あせて見える…… はぁーカッコいい」
事業部の女子社員達が、ため息を漏らしはじめた。
勿論私は、そんな会話に入る事はせず、自分の席についた。
別に気にする事なんてないよね? 二年前、偶然一緒に飲んで、ちょっと言い合いをしただけだ。それに、向こうだって、もう覚えていないかもしれない。
仕事に気持ちを切り替えよう。今日の段取りを確認する。
資料を取るために手を伸ばして顔を上げると彼の姿が目に入った。彼の席が、私の席からしっかりと見えてしまう位置に陣取っている。
なんだかやりにくい。席替えとかないだろうか?
取り合えず、パソコンの画面に目を向け、視野を広げないようにした。
社内の挨拶周りから戻って来た彼の部長と打ち合わせをしている声が、耳の周りをランニングしている。
気にする必要はないと、自分に言い聞かせたのだが……
「橋本さん」
気付けば、彼がデスクの横に立っていた。
「はい?」
一応顔を上げた。あー二年間と変わらない整った顔立ち。だが、一本筋の通ったような、凛々しさを感じる。
「午後、外部の発注先に挨拶に行きたいんだけど、同行できますか? 急で申し訳ないのですが…」
申し訳なさそうではない表情の彼がこちらをみている。
「えっ。あっ……」
何と返事をすれば良いのだろうか?
「木島君。外回りは私が一緒に行くわ。ちょうど、紹介したいクライアントがいるのよ」
部長の言葉に、ほっと胸を撫で下ろした。彼に、軽く頭を下げ、またパソコンの画面に目を戻した。
彼が、不思議そうに首を傾げたのが分かった……