「好き」と言わない選択肢
 「はい、よろしくお願いします」

 なんとか、納得してくれた様だ。

「それから、橋本さんは、外回りはしないから、必要なら他のスタッフに声をかけてちょうだい」

 部長が、少し小さめの声で彼に言っているのが聞こえてきた。

「えっ…… はい」

 腑に落ちないような彼の声が聞こえたが、気にする必要はない。

 主任として戻ってきた彼は、かなり努力をしたんだと思う。二年間前に第一企画部に居た若手社員は、ほとんどの人が辞めてしまった。多分、社に残っているのは、木島遥と私を賭けに出した岡田って人だと思う。
 この二人を認めるわけではないが、ママが言った、結果は出ると言ったのはこういう事なのかしれない。彼も岡田さんも、社の中でもやり手で、新人社員達の憧れる存在になっているとも聞いた。

 二年の歳月が、何かを変え始めたのかもしれない。なぜだか、胸騒ぎがした……
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