【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 この「話し合い」のために予定を空けておいたため、抜け出してしまえば自由時間も同然だった。
 部屋の前に立つ使用人に、大体の行先だけ告げて、二人は歩き出す。
 フレデリカは特別小柄なわけではないが、シュトラウスが長身なため、二人の身長差はそれなりだ。
 もちろん歩く速さも違う。ともに歩くときは、シュトラウスがフレデリカの歩幅に合わせていた。
 シュトラウスは、愛しい人の手を取りながら、いつもよりゆっくりと王城を進んでいく。

 行先は、噴水のある中庭だった。
 噴水の周りにはいくつかのベンチがあり、この場所を気に入る者は多い。
 当時10歳だったフレデリカが、シュウにいさま呼びをやめたのもここだった。
 
 壁は片側のみの長い廊下を進んでいくと、先客の姿が。
 
「アル?」
「姉さん! ……と、シュトラウス」

 前半は、ぱあっと嬉しそうに。後半は、少し恨めし気に。
 仲良く散歩中の二人にそんな反応をしたのは、弟のアルフレドだ。
 彼は、一人で噴水前のベンチに腰かけていた。
 ただの休憩中にも見えるが、フレデリカには、彼がここにいる理由に心当たりがあった。

「ルーナなら、今日は夕方まで街に出てるよ?」
「え、そうなの? じゃあここには来ないか……。って、別にルーナを待ってたわけじゃ」

 違う、ちょっと休憩してただけ、ルーナは関係ない、とアルフレドは続けるが、ムキになっているのが逆に怪しく、その言葉に説得力はなかった。
 この辺りはハリバロフからの留学生にも開放されており、自由に使うことができる。
 ルーナお気に入りの場所であることは、フレデリカも知っていた。
 アルフレドは、ルーナに会えるかもしれないからと、ここを休憩場所に選んでいるのだろう。
 大体のことを察している婚約者二人。違うと必死に否定するアルフレドを、にこにこと見守った。
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