【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 翌日の昼前には、予定通り街でのデートへ。
 もちろん、護衛もついている。
 お忍びのため、二人とも裕福な一般家庭の男女、といった装いだ。
 しかしやはり、フレデリカの輝きを隠すことはできず。
 以前から美しかった彼女だが、最近は色香も漂いはじめ、更に魅力的になっていた。
 そのため、街へ出た際に少しでもシュトラウスが離れると、フレデリカに声をかける男がいたり、近くに立ち止まって彼女をちらちらと見続ける者がいたりと、なかなかに大変な状況であった。


 今日なんて、シュトラウスが隣にいたというのに、フレデリカはナンパされた。
 前を歩く男がわざとハンカチを落とし、フレデリカに拾わせたのだ。
 善意から、フレデリカは男に声をかけ、ハンカチを手渡した。
 すると男は、わざとらしく驚いてから、お礼をしたいと言って彼女の腕を掴み、どこかへ連れて行こうとした。
 繰り返すが、シュトラウスが隣にいるのに、である。
 もちろん思いっきり引き剥がし、ぎろりと睨みつけて威嚇してやったが、シュトラウスの怒りは収まらない。
 相手の姿が見えなくなるまで、シュトラウスはフレデリカをがっちりと抱き込んで、自分という男の存在を主張し続けた。

「……ありがとう。シュウ」

 腕の中のフレデリカが、どこかしゅんとしながらシュトラウスを見上げた。
 善意からこんなことが起きてしまい、ショックなのだろう。

 悪いのは、女性の善意を利用し、自分の思い通りにしようとする男だ。
 フレデリカはただ、落とし物を拾ってあげただけ。
 そうなのだが……。シュトラウスは、フレデリカが心配でたまらない。

 彼女は過去に、一人で城を抜け出し、誘拐されそうになったことがある。
 貴族の男に話しかけているうちに、『真の愛』に目覚め、暴走する男が生まれてしまったことも。
 どちらも、シュトラウスが彼女を追い詰めたことが原因だったし、欲や悪意を抑えることのできない者が悪いのはたしかだ。
 フレデリカは被害者であり、彼女を責めることは、正しくはないだろう。
 けれど、彼女の婚約者で、これから結婚する自分が、なにもせず、なにも言わず、この状況を放置するべきではない。
 そう考えたシュトラウスは、彼女の手を引き、ある場所へ向かった。
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