【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 シュトラウスがやってきたのは、王都でも有名なジュエリーの販売店だった。
 高位貴族が利用するような、国きっての高級店だ。
 オーダーを受けての販売が主だが、その場で購入可能な指輪やネックレスもショーケースに飾られている。
 いきなりそんな店に連れてこられたフレデリカは、困惑した様子でシュトラウスを見上げていた。
 シュトラウスが指輪の並ぶケースに近づいたため、フレデリカもそれに続く。

「あの……シュウ? 突然どうしたの?」

 たしかに、昨夜は彼と指輪やドレスの話をした。
 だが、楽しみだね、どんなものにしようか、といったレベルの話で、まだ注文する段階には至っていない。
 式がいつになるのかもわからないし、打ち合わせや注文はまだ先だと思っていた。
 だから、どうして今ここに連れてこられたのか、フレデリカにはわからなかった。

「フリッカ。この中に、きみ好みの指輪はあるか?」
「へ? ええっと……」

 話が読めないながらも、フレデリカは「これと、これと……」と、自分の好みに合ったものを指さしていく。
 もしかしたら、シュトラウスは既製品を先に確認することで、事前にイメージを掴んでおきたかったのかもしれない。そう思った。
 しかし彼は、その場で店員と話を進め、さくっと指輪を購入した。もちろん、フレデリカの意見も聞きながらだ。
 店に入ってから、フレデリカの左手薬指に指輪がはまるまで、あっという間だった。
 前兆もない、急な指輪のプレゼント。当然嬉しかったが、フレデリカは混乱しきりである。

 揃って店を出ると、シュトラウスは脱力したかのように長く息を吐く。
 額に片手をあてながら、彼はフレデリカを見やる。
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