【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 フレデリカが真に愛する人を見つけたとき、自分は引くためだなんて、彼の自分勝手な決意だったかもしれない。
 けれど、5歳の王女との婚約を強制されたにも関わらず、彼はいつだってフレデリカを優先しようとしていた。
 間違っていたかもしれないが、彼なりに、フレデリカのためを思っていたのだと、もうわかっている。
 気持ちが通じ合った今、フレデリカが彼に対して疑いや不安を抱くことはない。
 今のフレデリカがシュトラウスに向けるのは、大好きだという気持ちと、安心と、信頼だ。
 
 そんな彼との出会いを作ってくれたこと、立場の弱い自分を守り続けてくれたこと。
 周囲の人々の気持ちは、フレデリカにもしっかりと届いている。伝わっている。
 フレデリカが近しい者に向ける信頼は、絶大なものだった。

「……守って、くれるんでしょう? 旦那様?」

 彼女の真っすぐすぎる瞳に、シュトラウスは言葉をなくした。
 そこまで信じてもらえることは、もちろん嬉しいのだ。
 彼女の気持ちに応えたいと思う。
 けど、やはりどうしても、不安の全てを拭い去ることは、できなくて。

「……っ」

 シュトラウスは、片手で顔を覆う。
 本当に? 本当に、彼女を守り切れるのだろうか。
 フレデリカはこんなにも自分たちを信頼し、その身を預けようとしてくれる。
 それだけに、怖いのだ。
 その信用を裏切ることが、彼女を失うことが。
 信じて、くれたのに。もしものことがあったら――悔やんでも悔やみきれない、なんてものじゃない。
 シュトラウスはきっと、彼女のあとを追うだろう。

 苦しみ続けるシュトラウスを見て、フレデリカは、幼子に向けるような、困った顔をした。
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