【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
「シュウ。ちょっとこっちに来てくれる?」
「……?」

 そう言ってフレデリカは立ち上がり、ソファの前まで行くと、こいこいとシュトラウスに手招きをする。
 よくわからないながらも、シュトラウスは彼女に従い、ソファに腰を落ち着けた。
 するとすぐに、ふわっと包み込まれる。
 フレデリカが、座るシュトラウスの頭を抱き込んだのだ。

「フリッカ?」

 シュトラウスはてっきり、彼女も隣に座るものだと思っていたから、突然のことに驚いて声をあげる。
 しかし、フレデリカが離れる気配はない。
 その胸に愛しい人を抱き、静かに目を閉じた。

 フレデリカに抱き込まれたシュトラウスは、困惑しながらも彼女の胸に頭を預ける。
 柔らかくて、あたたかくて、いい香りがした。
 フレデリカの胸が思い切り顔にあたっているが、今更、それくらいで恥ずかしがる仲でもない。
 シュトラウスからも彼女の腰に手を回し、その温もりを近くに寄せた。
 愛する人に柔らかく包み込まれ、シュトラウスもだんだんと落ち着いてきた。

「シュウ。大丈夫。きっと、大丈夫だから」
「……ああ。そう、かもしれないな」
「かもしれない、じゃなくて、大丈夫なの! みんながついてるし、私だって、ドレスの下にちょっとした防具をつけるつもりなんだよ」
「え、そうなのか」
「うん! 私も、自分でできる対策はしなくちゃね! 鉄板を仕込むのはどうかな?」
「……っ。くっ……」

 ドレスの下に鉄板を入れまくった強靭な花嫁を想像し、フレデリカの胸に顔を突っ込んだままのシュトラウスは、思わず吹き出した。

「あなたも一緒に考えてよ! ドレスの下に着こんでも違和感のない防具って、なんだと思う?」
「そうだな……」

 王女のフレデリカよりは、国境の守備を任される家の次期当主のほうが、その手のことには詳しいだろう。
 彼女の言葉に、シュトラウスも考えを巡らせる。
 冗談交じりのやりとりは、彼の不安を溶かしていく。
 なお、フレデリカの胸に抱かれる姿勢は、譲らなかった。よほどいい感じだったと思われる。
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