【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 アルフレドは、一度ここで言葉を切る。
 少し前かがみになって自身の両手の指を絡ませ、もごもごとしてから、隣に座るルーナを見つめた。

「……僕は、姉さんのこともきみのことも、大好き、だから」

 姿勢の関係で、やや下のほうからじとっと睨むように。唇を、尖らせて。
 言葉は素直だが、表情は拗ねた子供のようで。
 耳まで赤く染めあげたアルフレドの姿に、ついにルーナは耐えきれなくなった。

「可愛いわ、アル……」
「え?」

 王女暗殺計画の実行間近、という状況にはとてもそぐわぬ台詞が、ルーナの口からこぼれ出た。

「可愛いってなに!? 僕、男だけど!?」
「可愛いのよ。可愛いのよあなたは……。男とか女とか関係ないわ……」
「守る宣言からの告白で、可愛いって言われた男の気持ち、なかなかのものだよ……。ルーナ……」
「ふふ、ごめんなさい。でも、あなたが可愛いのは本当よ?」
「いや、だから……。僕としては、可愛いよりかっこいいのほうが……」

 がっかりするアルフレドの隣で、ルーナはくすくすと笑う。
 こんなにも自然に笑えたのは、いつぶりだろう。
 故郷のハリバロフでは側妃の娘として蔑ろにされ、婚約者の元では、愛されてはいるようだったが、暴力や暴言を浴びて。
 テネブラエの計画に勘づいてからは、怯えながら諜報を行ってきた。
 リエルタでアルフレドに再会するまで、ルーナは、泣くことも、心から笑うこともできなかった。
 やはりリエルタは――アルフレドの隣は、心地いい。

「……ありがとう、アル」

 目じりに涙を浮かべながらも、彼女はアルフレドに笑みを向けた。
 その瞳には、確かな愛情と信頼が映し出されていたが、ここぞというところで決められなかったことを悔やんで頭を抱えるアルフレドは、自分に向けられた感情に気が付かない。
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