【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
「仮眠……。忙しそうだとは思ってたけど、やっぱりそうだったのね。だから、これ……。少しでも疲れがとれればって」
「これは……?」

 フレデリカは、紙製の小袋をそっとシュトラウスに差し出す。
 シュトラウスが受け取ったことを確認すると、

「じゃ、じゃあ、用は済んだので失礼します!」

 と逃げるように立ち去った。
 中身を確認するどころか、お礼すら言えていない状態で残されたシュトラウスは、「いってしまった……」とぽかんとしていた。
 ここ最近、フレデリカが仕事中に訪ねてくるようになったのは確かだが、毎度こうして逃げられる。
 仕事の邪魔をしてはいけないと、遠慮しているのかもしれない。
 
 フレデリカのいなくなった執務室で、小袋の中身を確認する。
 
「……茶葉?」

 中には、瓶に入った茶葉と、フレデリカの手書きのメモが。

 疲労回復の効果があるハーブティーです。
 本当なら、ちゃんと休めたらいいんだけど……。
 少しでも疲れがとれればと思って、贈ります。

「フリッカ……」

 可愛らしい内容が、お手本のような見事な筆跡で記されていた。
 立派な王女となったフレデリカが、今も変わらず優しい人であることを感じ取り、シュトラウスからは自然と笑みがこぼれた。
 二人のやりとりを後ろから眺めていたブラームは、しみじみとした様子だ。

「フレデリカ王女、きれいになったよなあ……。麗しの王女様やってるときと、お前の前で見せる素の姿のギャップがまた、こう……」
「あ?」

 うんうんと頷いていたブラームであったが、シュトラウスから殺気が放たれたことを感じ、たじろぐ。

「フリッカをおかしな目で見るな」
「わかったわかった。……きれいだって言っただけなんだけどなあ」

 後半は、不満げにぼそっと付け加えられた。
 それに対してもシュトラウスが反応し、ぎっと睨みつけたものだから、ブラームは「おお怖い怖い」とおどけて仕事を再開するのであった。
 

 フレデリカが執務室を訪れるようになったのは、「仲良し大作戦」が発動されたからなのだが、シュトラウスはそのことを知らない。
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