【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 フレデリカは、大好きな人に抱き留められたドキドキが、まだ収まらなくて。
 シュトラウスは、先ほどの温もりが忘れられず、もう一度触れたいと願ってしまう自分と格闘して。
 ほぼ無言のティータイムとなったが、それでもフレデリカは楽しかった。
 外出への同行に頷いてくれたこと。一緒に露店をみてまわったこと。
 転びそうになった自分を支えてくれたこと、こうして一緒に喫茶店に来てくれたこと。
 どれも、フレデリカにとっては嬉しい出来事だったのだ。
 最後は少々気まずい感じになってしまったが、シュトラウスだって、二人の時間を楽しんでいるように見えた。
 だから、店をあとにするとき、こう口にすることに戸惑いはなかった。

「ねえ、シュウ。また一緒におでかけしてくれる?」

 シュトラウスの答えは――

「わっ」

 彼は、フレデリカの頭に、ぽんと触れた。
 
「シュウ……?」

 イエスと取っていいのだろうか。
 はっきりとした答えは得られなかったが、昔のように彼に触れられたことで胸が温かくなり、これはきっと「また行こう」という彼なりの返事なのだととらえた。

 一緒にお出かけして。前のように触ってもらえるようになって。
 フレデリカは、彼との距離が縮まったことを、心から喜んでいた。
 仲良し大作戦、大成功である。
 きっと、これから男女として、婚約者としても進展できる。そう信じていた。
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