【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 ここのところ、シュトラウスは悩んでいた。
 フレデリカとの距離についてだ。
 シュトラウスはフレデリカのことが大好きだ。愛しているともいえるだろう。
 けれど、望まぬ政略結婚を強制され、幼い頃には既に結婚相手が決まっていたフレデリカのことを、哀れんでもいた。
 いつか彼女は、真に愛する人を見つけ、その男と添い遂げることを望むかもしれない。
 そのときフレデリカの手を放すために、シュトラウスは彼女と距離をおいていた。
 なのに、だ。

 1か月ほど前からだろうか。
 フレデリカが、シュトラウスの元を訪ねてくるようになった。
 大好きで、可愛くてたまらない相手が、ちょっとした贈り物を持ってやってくる。
 嫌な気がするわけがなかった。
 彼女の滞在時間がごく短いから、仕事にも支障はない。
 いつの間にか、フレデリカの来訪を楽しみにしている自分がいた。

 フレデリカから「おでかけ」に誘われたときは、少し面食らってしまい、彼女との距離を保つために断ることも考えたが――。
 不安げに俯く彼女に、出会ったときの弱々しい姿が重なって。
 安心して欲しい、笑って欲しいと願ってしまい、彼女の髪にそっと触れ、外出への同行を了承してしまった。
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