【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 おでかけから少しの時が経った頃。
 部下のブラームにフレデリカとの仲についてつつかれたときは、自分に言い聞かせるように「妹のような存在だ」と答えた。
 本当は、それ以上の感情が……彼女を自分のものにしたい、他の誰にも渡したくないという欲が生まれていたが、それらにフタをするために、言葉だけでも取り繕った。
 フレデリカは、妹のような存在。だから、自分はまだ大丈夫。
 きっと、彼女の自由にさせてあげられる。
 自分を抑えつけるため、フレデリカは妹だと口にしたのだ。


 そのときのやりとりを、フレデリカ本人が聞いていただなんて、気が付かないまま。




「ん……?」

 仕事の合間に、別室へ向かおうと執務室を出たときだった。
 ドアの横に、小袋が落ちていることにシュトラウスは気が付いた。
 茶色い紙製の簡素なもので、フレデリカがよく使っているものだ。
 拾い上げてみれば、袋を留めるために使われているシールも、フレデリカ愛用のもので。

「フリッカ、来てたのか」

 見慣れた袋とシールに、それが落ちていた位置から、シュトラウスは中身を確認する前から、フレデリカが置いて行ったものであると理解した。
 いつもなら執務室に入って直接渡してくれるのだが、今日はドアの前に置いて立ち去ったようだ。
 理由はわからなかったが、フレデリカも王女として忙しい身だ。そういうこともあるだろう。
 執務室に戻り、自分の仕事机の上に小袋を置く。
 急ぎの用事があったから、中身の確認をする前に再び部屋を出た。

 この日を境に、フレデリカはシュトラウスの執務室を訪れなくなるのだが、そのことを、シュトラウスはまだ知らない。
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