神託で決められた結婚相手が四十路間際の中年伯爵さまでした。とても気が合って良い方なのですが、私も彼も結婚する気はありません。
そしてこの神託、にわかには信じられないことだが、いずれも百発百中で外れることがなかったそうだ。
千年前の巫女に始まり、歴史上出現した巫女たちの言葉に従った男女は、皆ことごとく互いを愛し続けた。
それは先日隣国に現れた巫女にしても同じだった。
隣国アルデマイラの民たちは、最初こそ巫女の言葉を疑ったが、彼女によって引き合わされたカップルは次々と恋に落ち、幸福な結婚を遂げていく。
平民、豪商、貴族……ついには同国の王子まで。巫女が口にした神託に従い夫婦の契りを結ぶと、それらはいずれも最愛の結果をもたらした。
そうやって、巫女の評判はあっという間に隣国全土に広まっていった。
彼女は皆から感謝され、あがめられ、アルデマイラで確固たる地位を確立した。
そして巫女は、今度は東のルルサス王国へ向かうと告げる。
彼女は語った。ここだけでなく、かの地においても結ばれるべき者たちが大勢いる。
自分は人の幸せのため、真実の愛のために尽くしたいのだと。
巫女には権力欲などなく、ただ善意からそう言っているようだったが、成し遂げた成果の大きさゆえに、もはやその存在はルルサスにおいても看過できないものとなっていた。