ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
皇太子妃として歩む生活

星空の女神に相応しき調度品

「ツカエミヤは!?」

 見慣れぬ場所に転移したことを確認した私は、真っ先にツカエミヤの姿を探した。
 簡易の転移魔法は、一度に転移可能な人数が限られている。
 どれほど優秀な転移魔法を使える人でも、両手で数え切れる程度が手一杯。
 殿下だけ先に転移してきたことを考えるなら、当然ツカエミヤは──。

「やっと邪魔者が消えて、二人きりになれたのに。おれの名前よりも先に侍女の名前が出てくるなんて、酷いな……」
「殿下の婚姻を受け入れるといったけれど、それには条件があるの」
「おれよりもその侍女が大事だって言うなら、君のそばにはおけない」
「約束してくれたわよね。私の愛は求めないと」
「今は求めないけれど、いずれは期待している。君のそばにおれよりも大切なものが居座り続けていたら、一生君はおれのものにならない。それだけは、許せないな……」

 殿下は、ツカエミヤに対して友情や家族愛を抱くことすらも我慢鳴らないようね。お兄様よりも、嫉妬深いかもしれないわ……。しばらくは、どこまでなら許されるのかを探ることになりそうね。

「条件を飲めないなら、カフシーに戻るわ」
「おれが、逃がすと思うの」
「私を愛してくださる殿下なら、お願いを聞いてくださると信じているわ」

 殿下は私のお願いに、耳を傾けてくれるかしら?
 殿下は壁に飾られた鎖と手錠をじっと見つめている。まさか、あれで縛り付けて無理矢理言うことを聞かせれば……なんて、考えていないわよね……?

「……殿下……」
「……まずは、お願いから聞こう」

 まずは、と。
 ワンクッション置くのが、殿下の恐ろしい所ね……。私の願いが殿下にとって機嫌を損ねることなら、あの壁に飾られている手錠と鎖が、真新しい展示品ではなくなってしまうわ……。

 殿下が何を考えていようとも。私が彼に願うことは、一つだけよ。
 私の願いは──。

「ツカエミヤを、今まで通り侍女として私のそばにおいて」
「侍女とおれに危機が迫った時。おれを助けてくれるなら、許可してもいいよ」

 殿下はどちらか片方だけしか助けられない前提で話をしているけれど、私はどちらも見捨てたりなどしないわ。
 二者択一の選択を迫られたとしても、私は必ず第三の答えを探し出して、奇跡を起こしてみせる。

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