ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。

皇太子の公務に専念させよ

「盛大な婚姻の儀なんて、必要ない」

 ディミオは、私との婚姻を急いだ。
 婚姻するからには、国民に私の姿を晒すべきだと関係各所から随分説得されたようだけれど、ディミオは私の美しきウエディングドレス姿を下々へ見せるわけにはいかないの一点張り。
 ディミオが私との婚姻を認めないのであれば、王太子を辞退したいと言い出したことで、全面的にディミオの主張が受け入れられ──今に至る。

「ミスティナ。今度、おれの前だけでウエディングドレス姿を見せて」

 紙切れ一枚の婚儀を終えたディミオは、満足そうに私の耳元で囁いた。
 私は上質な紙に自身の名を書き記しただけなのに……。これだけで婚姻が成立してしまうなんて、恐ろしい話だわ。

「私は今日から、カフシーの名は捨てなければならないの?」
「そうだね。今日からミスティナは、ミスティナ・アルム。皇太子妃だよ」
「そう……」

 生まれてからずっと、私の名はミスティナ・カフシーだったから……なんだか不思議だわ。
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