ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
「これだけは絶対に譲れないよ。危ないから、おれに任せて」
「私こそ、譲るわけにはいかないわ」

 ご覧の有り様よ。
 私達は互いに自分が担当するから、手を出すなと牽制し合っている。
 昨日からずっと、この議論には終わりが見えないのよね……。

「死ぬかもしれなんだよ。ミスティナが不老不死の魔法を使えるなら許可するけど、変身魔法が使えるだけで、命は一つしかないんだろ」
「……修行を積めば、その命すらも完璧にコピーして成り代わることは理論上可能だけれど、今は無理ね」
「それが実現できるまでは、絶対に許可できない」
「なら、明らかに危険がない相手ならば、私が最後まで始末をつけてもいわよね?」

 私は具体例を出してディミオの説得に走った。
 女同士の(いさか)いにまで、ディミオに割って入られたら堪らないわ。

「女性同士なら……。でも……そうやって気を抜いた時が一番危ないから……」
「女性同士ならいいのね?ありがとう、ディミオ!」

 大好きだとは言えないけれど、私は勢いよくディミオへ飛びついて喜んだ。
 私が難しい顔をして唸っていたり怒っているよりも、笑顔を見ていたいはずよ。
 ディミオは案の定流されて、困ったように苦笑いしていた。

 ふふ、私の勝ちね!

 今すぐには無理でも……。
 異性の悪党達も私が自ら手を下せる許可が得られるように、もっと変身魔法を勉強しないといけないわ。

 やるべきことは増えたけれど、私が今まで通りの生活をするために必要な問題はクリアできた。
 後は、細々と人脈を広げて、今まで通りの生活を営めるように手を回すだけね。

 もうひと踏ん張りよ。頑張りましょう!

 私は気合を入れると、次の一手を繰り出すべく行動に移した。
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