朝型ちゃんに一目惚れ
 言い終わると、陽菜ちゃんは気まずそうに顔を歪めた。

「…すみません。私、一樹先輩に恥をかかせていませんか?その…配慮が足りないですか…?」

「え?」

 そうか、俺の気持ちを考えてくれているのか。
 確かに俺の方が一応先輩だけど、別に俺は嫌じゃないし、一生懸命教えてもらっているし……

「そんなことないよ?まあ陽菜ちゃんは、この“吸血鬼”が人を襲わないように心配してくれてるんだから。一生懸命教えてくれて、ありがたいと思ってるんだ」

 俺は陽菜ちゃんが気にしないように、笑い冗談めかしてそう言ってみた。

「良かったな陽菜。これで人類が少しは救われるぞ〜!」

 吉田も笑って俺の冗談に便乗する。

「良かったです、ありがとうございます!」

 陽菜ちゃんが、俺の大好きな笑顔で笑った。


 俺はその日から、陽菜ちゃんのアドバイスをもとに、ほんの少しずつでも早く起きるようにしてみた。

 そして何日かが過ぎた。


「吸血鬼先輩、最近朝から爽やかになってきたな!夜メッセージしても出ないじゃん!寝てるの?えらいな〜!」

 吉田が笑いながらからかうように、俺に言う。

「もう吸血鬼じゃないからな??…元々違うけど」

 それを聞いた渡瀬もそばに来て言った。

「カズキ、灰にならずに済んでるんだって?」

「ならないよっ!」

 吉田が笑いながら言う。

「いつも朝なんか目が死んでてさ、この前のウォーキングの次の日なんか……」

「あれはゾンビだったよな!」

 渡瀬も笑う。

「仕方ないだろ〜!」

 いつもの学校での俺達三人のやり取り。
 でも、明るい日差しを感じながら、という清々しさが俺の気分を更に明るくしていた。
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