朝型ちゃんに一目惚れ
 少し気持ちを落ち着かせ、みんなと決めた集合場所に戻ろうとしていると、薄暗い水族館の通路に一人でいる陽菜ちゃんを見つけた。

 陽菜ちゃんは地面をキョロキョロと必死に見渡しながら歩いている。

「…陽菜ちゃん??あ、やっぱり陽菜ちゃんだ」

 薄暗い通路で俺の声に気付き顔を上げた陽菜ちゃんは必死な顔だ。

「…どうしたの?」

「一樹先輩……私、今日仁科先輩からもらったハンカチを落としたのに気付いて。言い出せなくて下を見ていたらはぐれてしまったんです……。もう、皆さんになんて連絡したらいいのか……」

 だいぶ動揺しているらしい。

「そっか、俺も一緒に探すよ。みんなには落とし物したらしいって送っておくから」

 俺はすぐに、『合流した陽菜ちゃんと落とし物を探す』とみんなにメッセージを送ると、陽菜ちゃんと歩き出した。

 やっと少し落ち着いたのに、今度はその俺が気にしている陽菜ちゃんとふたりきり。
 だからといってこんな時に、自分のことをどう思っているかなんて聞けるはずはない。

 でも今は陽菜ちゃんが困っているのだから、助けてあげるべきだろう。

 俺は気持ちを切り替えるため気づかれないように小さく首を横に振ってから、陽菜ちゃんに尋ねる。

「落としたのは、まだ折りたたんであるハンカチ?色は……周りが暗いもんね。見ても分からないか」

「あっ、でも白っぽく見えると思います。薄黄色のハンカチなんです。袋から出したばかりで……」

 俺と陽菜ちゃんは、しばらくふたりきりでハンカチを探し回った。
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