朝型ちゃんに一目惚れ
 他のみんなもいるから、二人っきりじゃない。
 でも俺は陽菜ちゃんのすぐそばにいられる口実ができて嬉しかった。

 自分が少し緊張していること、陽菜ちゃんにバレなければいいんだけど……


「キレイ!!」

 土産物を見るため店内を見て回っていた陽菜ちゃんが、そう小さく声を上げる。

 ある店にあった、貝殻の形の飾りが付いたヘアアクセサリー。
 しかしけっこうないいお値段で、やはり陽菜ちゃんのお小遣いでは厳しいのだろう。

 陽菜ちゃんはしばらく立ち止まっていたけれど、やはり諦めたらしい。

 陽菜ちゃんにこれをあげたい。
 でも、変に思われないだろうか?

 今なら他のみんなはこっちを見ていない。
 俺は決心すると、「ちょっと向こうを見てくる」と陽菜ちゃんに断ってから、すぐに並んでいる一つをこっそり手に取ってレジに向かった。

 そして何もなかったように戻ってきて、また陽菜ちゃんと土産物を見て回った。

「……カズキ先輩、決めました!さっきのお店で買ったお菓子を両親二人に、お酒を父親にと、この店にあるエコバッグを母親に……」

 陽菜ちゃんはこの店の会計を済ませると、俺に何度もありがとうと言ってくれた。

「決まってよかったね」

 俺の方は照れてなんと返していいか分からず、そんな言葉しか出てこなかった。
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