朝型ちゃんに一目惚れ
 とうとう家に向かう時間。
 それぞれ土産を持ってみんなで駅前へ。

「さらば、海よ……」

 吉田が本当に泣きそうになりながら海の方に向かって呟く。

「みんな、忘れ物はないか〜?」

 渡瀬はその横ですまし顔のままみんなにそう呼び掛けると、吉田がまた呟いた。

「俺の、青春……
「じゃ、駅に入るぞ~」

 渡瀬は感極まる吉田をまた見事にスルーして、駅に入っていった。


「楽しかったですね、またみんなで来たいです」

 陽菜ちゃんは、仁科と兄である吉田の間に座り、小さな声で楽しそうに話している。

 陽菜ちゃんに結局渡せなかったアクセサリーは俺のバッグの中。

 ……せっかく、買ったのにな……

 俺は陽菜ちゃんに渡すことを諦めることにした。

 もう夜。
 朝早かったとはいえ、今日の俺はやっぱり変に目が冴えている。

 そんな俺がまだ眠れるはずもなく、二度目に乗り換えた電車で寝たフリをして過ごし、そして無事に地元駅に着いたのだった。


「……あれ、よっしーは??」

 電車を降りた直後に俺が気付く。

 吉田がいない。
 最後の方、喋っていないなあとは思ったけれど……

「えっ、アイツまさか……」

 渡瀬はそう言うと、手際よく携帯を取り出し電話を掛ける。
 しかし吉田は気付かないらしい。

「よっしー、出ない。一駅前までは起きてたはずなんだが……まさかのこの五分ちょっとで、寝たな」

 みんなは顔を見合わせ、ため息をついて苦笑いする。
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