朝型ちゃんに一目惚れ
「よっしーに降りるとき声掛け忘れた。待っててやりたいけど、仁科も荷物があるし最寄りはまだここから乗り換えるしな……」

 渡瀬は彼女である仁科の帰りが気になるらしく、考え込んでいるらしい。
 すると仁科は突然ある提案をしだした。

「…涼成、吉田くんには悪いけど私を送ってくれる?あの電車、あと三駅で回送電車に変わるはず。いくら吉田くんでもそれならきっと起きるわ。それから星野くんは吉田くんが来るまで、陽菜ちゃんといてあげてくれる?」

 それが一番だと思ったらしく、みんな一瞬の間を置いてうなずく。
 そしてみんなそれぞれ携帯から吉田にメッセージを入れ、お開きになった。

「楽しかったな!二人とも、気をつけて。またね!」

「私も楽しかったです、今日は本当にありがとうございました!」

 俺のすぐあとに陽菜ちゃんが二人に頭を下げる。

「…まあ、今日は良かった!良い思い出だよな、海と水族館と、オチによっしーだったけど!二人とも、悪いけどお先。じゃ、また月曜日!」

 渡瀬は笑って俺たちにそう挨拶するとゆっくり歩き出す。

「陽菜ちゃん、本当にごめんね。星野くんも。今日は楽しかったね、またどこかにみんなでお出掛けしよ。…ふふっ、吉田くんによろしく」

 仁科は満面の笑みで俺と陽菜ちゃんにそう言うと、渡瀬に続いて歩き出した。

 するとすれ違いざま、仁科は俺と陽菜ちゃんに向かって笑顔のまま小さな声で言う。

「…頑張ってね、二人とも」

 仁科はそのまま渡瀬と二人、乗り換え口に向かって行った。
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