朝型ちゃんに一目惚れ
 地元の駅前デッキ。
 日曜日の夜でまだ人がけっこういたけれど、すぐにベンチが空いているのを見つけて二人で少し離れて座った。

 ……仁科のあの言葉、まさか俺の陽菜ちゃんへの気持ちを知ってたんじゃ……

 俺の中でそんな考えがよぎった。
 確かに俺たちは吉田を待つことになったが、仁科はわざとそれを言うようなことはないからだ。

「カズキ先輩、お兄ちゃんがすみません。それに私と一緒に待ってもらって……」

 陽菜ちゃんが、苦笑いのまま俺に頭を下げる。
 俺からすれば好きな子と二人きりなのだから、嫌なはずはない。

「全然構わないよ!それに、よっしーのあのテンションは慣れてる。中学からの仲だしね。ワタが前の駅くらいで声を掛けてたのに、まさかあの数分で寝るなんてさあ……」

 俺は陽菜ちゃんと笑い合う。

 ……そうだ、今ならあれを渡せるかもしれない。
 受け取ってもらえるか分からないけど……

 俺は思い出し急いでバッグから土産物が入った袋を取り出す。

「陽菜ちゃん、これ……」

「はい?」

 陽菜ちゃんは俺が差し出した袋を見た。

「お土産。みんなで今日行った記念に、これ、陽菜ちゃんにあげる。良かったら、もらってほしいんだ。あ、“先輩命令”とかじゃないよ?もし嫌だったなら……」

 俺は変な緊張のあまり早口でそう言う。
 陽菜ちゃんは驚いた様子で目を瞬くと、頭を下げてそっと袋を受け取ってくれた。

「ありがとうございます。開けても、良いですか?」

「え、うん……」

 俺の返事のあと、陽菜ちゃんが袋を開く。
 すると陽菜ちゃんの手が止まった。
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