いつしか愛は毒になる
「それに私は……独り身なので、こうして早苗さんと仲良くして頂いてとっても嬉しいです」

「そうですか、またいつでも相手してやってください、な、早苗」

雅也が私の肩をポンと叩き、私の身体が跳ね上がった。

「あ、えぇ、またいつでもいらしてね」

「じゃあ失礼します……あっ……」

少し酔っていたのか、麗華がピンヒールのパンプスで一歩踏み出そうとして、身体のバランスを崩した。私が手を伸ばすより先に、雅也が麗華の背中をそっと支えた。

「河本さん、大丈夫ですか?」

「すみません……酔っちゃったのかしら……」

麗華が上目遣いで雅也を見上げて、雅也の唇が僅かに持ち上がった気がした。

「隣なんでお送りしますよ、うちの妻と飲んでいたせいで転んでケガでもされたら高坂社長に顔向けできません」

「そんな、悪いです」

そう言いながらも麗華の足元はおぼつかない。
私は小さく口を開いた。

「あの、主人も送ると言ってますし、私も麗華さんが……心配です」

「決まりだな、じゃあ河本さん、僕の肩につかまって」

「……すみません、では」

そう言って麗華は雅也の肩に手を添えると、雅也に支えられながら玄関扉を出ていった。
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