いつしか愛は毒になる
※※※

(昨日飲みすぎたみたいだったけれど……麗華さん大丈夫だったかしら……)

私はいつものように雅也の出勤を見送ると、すぐに麗華にLINEを送った。すぐに麗華から『大丈夫』と『ありがとう』のスタンプが連続で帰って来る。

(二日酔い大丈夫そうで良かった)

私は麗華の仕事の邪魔にならにように、『また飲もうね』と短く返信を返した。

「さてと……」

私はダイニングテーブルから立ち上がると、いつものように掃除と洗濯を済ませる。そして玄関のシューズボックスから雅也の革靴を取り出すと丁寧に靴クリームで拭き上げていく。

「……綺麗になったわ」

私は、汚れがとれ、光沢がでた革靴をシューズボックスに仕舞うと、忘れないうちに雅也のワイシャツを洗面所にかけた。


──プルルルルップルルルッ

「珍しいわね、誰かしら……」

私は鳴り出したスマホを確認して直ぐにスワイプした。

「あ、あのどうしたの? 雅也さん」

出勤した雅也から私に連絡が来るなんて珍しい。そもそも雅也が私に電話をしてくるなんて余程急ぎの案件なのだろう。

(またなにか……失敗しちゃったかしら……)

私はドクドクと動悸がしてくる。

『……俺だが。今日は大事な接待の日なんだが、ネクタイピンを忘れた。あとで届けに来てくれ』

「あ、わかりました」

(良かった……叱られるのかと思ったわ……)

私はスマホをかかえたまま胸をなでおろした。

『会議があるから、届けに来るのは一時間後でいいからな!』

「はい。あと、あの、ネクタイピンは、どれを……」

私の言葉に雅也の眉間に皺が寄ったのが電話越しにわかった。

『言っただろう、大事な接待だ。お前の父親から貰った一番高いヤツをもってくればいいんだっ!』

「ごめんなさい……承知いたしました……」

雅也からは何の返事もないまま、むなしく話中音が流れてくる。

「また怒らせてしまったわ……急いで届けないと……」

私は雅也の部屋から父の形見のネクタイピンをシルクのハンカチに包むと、すぐにカーディガンを羽織って飛び出した。
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