いつしか愛は毒になる
俺はイライラすると、目の前のボールペンを床に叩きつけた。

「ったく、ほんとイラつく女だ。俺の指示がなければ何一つ満足にできない」


──コンコンッ

俺が返事をする前に扉は開かれ、新しいセリールのバックを抱えた杏子がベーグルを片手に社長室へと入って来る。

「どうしたの?扉の前まで聞こえてたわよ?」

「あぁ、ちょっとネクタイピンを早苗に届けさせようと連絡したんだが、どのネクタイピンがいいかわからないなどと、言い出してな」

「そうなのね。あれ? でも雅也、高坂社長から頂いたネクタイピンしかつけないんじゃなかったの?」

杏子がネクタイピンのついてない俺の胸元を指さした。

「あぁ……そうなんだ。どこかに落としたみたいでな。てっきり机に置き忘れたとばかり思っていたんだけどな、まいったよ。あれは高坂社長から俺の社長就任の際に貰った特注品なんだ」

「だよね。それに雅也、今日、高坂社長と都市開発の契約の日だったよね?」

「そうなんだ」

「今日は一緒に契約行けなくてごめんなさい」

杏子がしおらしくそう言うと眉を下げた。
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