いつしか愛は毒になる
「あッ……雅也、愛してる」

「杏子っ……はっ……」

「雅也……もうっ、私……」

ギシギシッと規則的に聞こえてくるデスクチェアの音が小刻みになってきて私は後ずさりした。

──カチャン……

(あっ……)

私の掌から滑りおちて床に転がったネクタイピンを見下ろしたとき、社長室の中が急に静かになる。

「……誰だ?」

(雅也さんがこっちにくる……)

私はネクタイピンをそのままに足音を当てないように後退していく。

「? どうしたの? 雅也?」

「誰かいるのか?ちょっと待ってろ……」

カチャカチャとベルトを締める音と低く雅也の声が聞こえてきて、私は気付けばその場から一目散に駆け出していた。
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