いつしか愛は毒になる
「このケガ……どうしたの?」

「ちょっと……ぶつけたの。そそっかしいでしょ……」

なんとか震えずに紡いだ私の嘘に、智は首を振った。

「早苗、嘘つくとき必ず髪を耳にかける癖あるの知ってる?」

「えっ?」

そう言われて自分の掌が髪に触れていることに気づき、私は慌てて掌をひっこめた。

「早苗」

「……っ!」

そして智がふいにこちらに掌を伸ばしたのを見て、私は反射的に蹲るようにして頭を両手で守った。

「……早苗?どうしたの、大丈夫?!ごめん、肩にほこりがついていたから……」

「あ、違うの……私……っ」

智は雅也じゃないのに、いつもぶたれている私は咄嗟に智から殴られると思って頭を守ったことに気づく。

「あの……」

「わかったよ……」

「智……くん?」

「ずっと……怖かったね……誰にも言えなかったね」

智がそう言葉に吐き出すと、ゆっくり手を伸ばして、私の身体をそっと包み込んだ。

「……もう大丈夫だから……僕が早苗を守ってあげるから」

「智くん……ひっく……私……」

私は気付けば縋るように智の背中に両手をまわすと、子供みたいに声を上げて泣いた。
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