いつしか愛は毒になる
「私が弱かったせいで……私は智くんと別れを選んだの……こんな弱くてどうしようもない私が今更、智くんの手をとるなんて……」

「いいんだ……臆病だったのは僕も同じだ……運転手の息子だからと自分を卑下して……早苗を愛していたのに強引に連れ去る勇気が出なかった」

「違うっ、智くんのせいじゃないわ」

「うん、きっと誰のせいでもないんだよ。互いに少し踏み出せる強さが足りなかっただけ……でもいまは違う。もう僕は間違えたくない、早苗と一緒に居たいんだ……」

「智くん……」

「僕が早苗を幸せにしたい、今度こそ……。そして……旦那さんからも必ず守ってあげるから」

愛はあったかくて優しくて……努力も我慢もしなくてもいつの間にか隣にあって、そっと心を温めてくれるものなのかもしれない。そんなことが頭の中に浮かんできて、智の顔がすぐに涙で滲んでいく。

「早苗……今も変わらず……愛してる」

私の名を愛おしそうに呼ぶ智の声に耳を傾けながら、気づけば私は近づいてきた智の唇に瞼を閉じた。
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