いつしか愛は毒になる
料亭の一室で、俺は高坂社長と麗華と三人で日本酒を傾ける。

「雅也くん、今日はペースはやいんじゃないのか?」

「高坂社長とのお酒は格別でつい進んでしまって」

俺の言葉に気をよくした高坂社長が、大きな口でガハハと笑った。その口の奥に見える金歯に、人間としてのいやらしさを感じるのは俺だけだろうか。

俺はいい感じに高坂社長が酔ってきたのを確認すると、麗華に目配せした。すぐに高坂社長の隣に居た麗華が高坂社長に日本酒をつぎながら微笑んだ。

「高坂社長、酔いが回ってしまわれないうちに……そろそろ契約の方を……」

「おお、そうだな。雅也くん、契約書をだしてくれ」

「承知致しました」

俺はすぐに契約書を取りだすと、席を立ち高坂社長の横に座りなおした。

「社長、こちらが御社との都市開発の業務提携について記した契約書となっております。ご一読くださいませ」

高坂社長が契約書に視線を走らせ終わると同時に、麗華がペンと印鑑を用意する。

「うむ、いいだろう。サインするよ」

「ありがとうございます」

お礼の言葉を口にした俺と、ふいに目があった高坂社長が首を捻った。

「ん? 雅也くん、私のプレゼントしたタイピンはどうした?」

「あぁ……社長から頂いたネクタイピンなら毎日欠かさずつけてますよ」

「という割に、今日はつけてないじゃないか? まさかなくしたのか?」

じろりと睨まれた俺は、俺は目じりを下げて首をすくめた。
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