いつしか愛は毒になる
「では……社長、そろそろ迎えのタクシーが来る時間になりましたので……この辺りで」

麗華の声に高坂社長が僅かにお猪口に残った酒を飲み干す。

「おぉ、もうそんな時間か。楽しい酒の場は時間があっという間だな」

「恐れ入ります」

「雅也くんは、良かったら今晩ここに泊まっていくといい。私が泊まる予定だったんだが、明日は朝からゴルフが入ってね」

「そうでしたか。では遠慮なく、ありがとうございます」

俺は事前に麗華から接待のあと、この部屋に泊まれることを聞いていた。その麗華も高坂社長を見送れば、この部屋に戻ってくる約束になっている。

(今日は本当にいい日だ……契約も無事済ませ、いまから麗華を抱けるなんて)

高坂社長に麗華がジャケットを手渡すのを見ながら俺も立ち上がり、両手を自身の身体の前で重ねた。

「雅也くん、これからも宜しく頼むよ」

「はい、今後ともどうぞ宜しくお願い致します」

俺は再度深く丁寧にお辞儀をした。

「では、新山社長失礼致します。有難う御座いました」

麗華が高坂社長と共に部屋から出ていくと、俺は胡坐をかき、すぐにネクタイを緩めた。そして一人きりになった部屋でスマホを持ち上げると、ため息交じりに早苗の名前を浮かべた。
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