いつしか愛は毒になる
私はチンッというトーストの焼けた音をきいてトーストをお皿にのせると、雅也のお気に入りのホテルご用達のバターを乗せ、コーヒーをテーブルに置いた。

そして冷蔵庫から、昨日用意しておいたサラダを取り出し隣に置く。そのタイミングでスーツに着替え、髪を整髪料で整えた雅也が黙って椅子に腰かけた。

「……ふん、相変わらず代わり映えのしない朝食だな」

「あ、あの雅也さんから、毎日このメニューでと言われていたから……」

「俺のせいだって言いたいのか?」

「ち、違うわ……もし食べたいメニューがあったら、教えてくれたらと思って……」

その時だった。雅也から焼きたてのトーストが飛んできて、私の顔面に当たった。

「きゃっ……」

「いいかげんにしろ!」

雅也の怒鳴り声に私はバターでべたべたに汚れた髪をそのままに床に這いつくばった。

「なぜ、いちいち俺が妻である、お前に指示を出さないといけないんだ?ただでさえ仕事で部下たちの上に立ち、日々神経をすり減らしているのに!俺に家庭でも神経をすり減らせっていってるのか?!」

「そんなこと……本当に至らない妻でごめんなさい」

「ほんとにな!お前はいつもそうだ!俺の指示がなければ何一つ満足にできない。朝食だって、たまには別のメーカーのトーストにしようとか、健康のためにフルーツをつけてみようとか、俺が気分よく出勤できるように配慮したことがあるのか!」

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

──ピーンポーン
< 5 / 60 >

この作品をシェア

pagetop