いつしか愛は毒になる
「なっ……! 雅也くんっ?! 貴様っ!」

よく知っているその声に俺が振り返る間もなく、俺はその声の主に殴り飛ばされた。

「……痛って……」

口元を拭えばすぐに袖に血が滲んだ。

「麗華くん、大丈夫か?!」

(え? 高坂社長?)

麗華に見送られて帰ったはずの高坂社長が怯えている麗華を抱き起すと、すぐに手首のネクタイを解いた。

「……社長っ……私っ……」

「もう大丈夫だ。麗華くんが私が忘れた携帯を取りに行ったまま戻って来ないから心配で来て見れば……まさかこんなことになってるとは」

「はい……いきなり新山社長が……私の手首を縛りあげて」

高坂社長がジャケットを麗華に着せると直ぐに俺の目の前にしゃがみ込んだ。

「雅也くんっ!! こんなことをしてただで済むとおもってるのか?!強姦は犯罪だぞ!!」

「なっ……社長、違います!僕を誘惑してきたのは……麗華の方だ!」

俺はようやく麗華に嵌められたことに気づき、必死に高坂社長に弁解する。

「聞いてください! 今日この部屋を高坂社長が使わないことも、僕に事前に連絡してきて、今夜一緒に泊まろうと誘ってきたのも麗華なんです!」

「ひ……ひどいわ……新山社長そんな嘘を……また私を辱めようとしたくせに……」

(は? また?)

見れば麗華がぽろぽろと大粒の涙を流して震えている。
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