いつしか愛は毒になる
「早苗さんに知られたくないんです、早苗さんとは姉妹のように仲良くして頂いていて……どうしても早苗さんに知られたくない、悲しませたくないんですっ……」

「しかし……っ」

「高坂社長が殴ってくださっただけで十分です。あとは……もう今後、新山社長とお会いする機会さえないようにして頂けたら……」

「…………」

「お願いします…」

頭を下げる麗華を見ながら高坂社長が立ち上がると、俺の鞄から契約書を取り出し、ビリビリに破いていく。

「あっ! それはっ、高坂社長!」

「うるさいっ! 黙れ!」

「高坂社長っ……どうか僕のこと信じてくださいっ、誓って無理やり河本さんと関係を持ったことも、持とうとしたこともございません!ネクタイピンだって、どこかに落としてしまって……まさか河本さんが持っていたなんて」

「まだ言うか!」

見たこともない激しい怒りを露わにした高坂社長に俺は思わず口ごもった。

「麗華くんが嘘をついているのなら、なぜネクタイピンのことを素直に言わなかった?落としたりなくしたりしたのであれば素直にそういえばいいだろう?しかし雅也くんは、そうは言わなかったうえに、早苗さんの頼みだと嘘までついたじゃないか!」

「そ……それは……」

俺はギリッと奥歯を噛み締めた。

「今回のことは麗華くんと早苗さんの為に墓場まで持っていく。ただし、今後一切の取引はしない! わかったな!」

高坂社長は俺に捨てセリフをはくと、麗華を連れて部屋を出ていった。

(……何なんだ?!)

(一体、麗華はなんでこんなことを……)

「……クソッ!!」

俺は麗華が残していったネクタイピンを睨みつけながら、握りしめた拳を壁に思い切り打ち込んだ。
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