忘れられた恋の物語
家を出て、斗亜と待ち合わせしたいつものバス停までゆっくりと歩いていく。早歩きをしたらまた斗亜に小言を言われるから。

早く家を出すぎて時間の30分前に着いたのに、そこにはもう斗亜がいた。


「斗亜!もう来てたの?」


嬉しくて思わず走り出そうとした私を、斗亜が慌てて手で制止した。


「走っちゃダメ。」

「…はーい。」


冷静に止められて初めて、自分がこんなに無邪気に走り出してしまうようなタイプだったんだと気付かされる。

斗亜と出会ってから今まで自分でも知らなかった自分の一面に気付く。

ゆっくり歩いて行って斗亜の前に立つと、彼がニコッと笑った。


「おはよう柚茉。体調は大丈夫?」

「うん。斗亜に会えるからすごく元気。」

< 103 / 156 >

この作品をシェア

pagetop