忘れられた恋の物語
「好きだよ柚茉。」

「私も好き。」


もう一度優しく触れるだけのキスをし、すぐに唇が重なる。体を引き寄せられ、何度も繰り返されるキスに切ない気持ちが入り交じった。

最後の日だからか2人ともお互いに離れようとはせず、そのまま私は斗亜の腕の中で眠った。


「好きになってくれてありがとう。一緒にいられなくてごめん。」

「…本当に好きだった。」


眠りに落ちる直前、斗亜がそう言ったのが聞こえた。何か言いたかったけれど私はそのまま眠ってしまった。

斗亜の言葉が別れの言葉のようで悲しかった。


「…もっとそばにいたい。」


一筋の涙と共に溢れた斗亜の本音は、私に聞こえることはなかった。


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