忘れられた恋の物語
君の記憶
次の日。ベッドから飛び起きた私はすぐに隣を見た。

そこに斗亜はいなかった。


「斗亜…?」


呼んでも返事がなくて、私はベッドから降りる。

周りを見渡した私は悟った。

涙が溢れてくる。自分では止めることもできないほどの。


「行っちゃったの…?」


そう聞いたけれどわかっていた。斗亜はもういないと。昨日まであった斗亜の荷物が1つもなくなっていたのだ。

部屋はまるで脱け殻のようだった。

その時、テーブルの上に何かが置かれているのに気が付き、私は急いで駆け寄った。

それは夜のメリーゴーランドが描かれたポストカードだった。

何か書いてあるかと後ろをひっくり返したけれど、何も書かれてはいなかった。


「何か書いてくれればいいのに…。」


まるで自分のいた痕跡が何も残らないようにしているみたいだ。

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