忘れられた恋の物語
「こんなのひどいよ…。」


昨晩まで確かに目の前にいたのに、夢を見ていたようにも感じられた。

涙はしばらくの間止まることを知らなかった。

少しして泣き疲れた私は、自分の荷物と斗亜の残していったポストカードを持ってホテルを出た。

家に帰ると両親が心配そうに迎えてくれたけれど、泣き腫らした目を見ると何も私に聞かなかった。

部屋で自分のベッドに入ると、私はもう一度泣いた。なぜこんなに悲しいのか自分でもわからない。人生で初めての大失恋だからかもしれない。

泣き止んでぼんやりとカードに描かれたメリーゴーランドを眺めながら斗亜との1か月を思い出した。

怪しいと思いながらも最初から彼のことが気になって仕方なかった。だから『友達になりたい』と言われてがっかりしてしまったこともあった。

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