忘れられた恋の物語
『"自分の大切な人が死ぬかもしれない"そんな心配させるなよ。』


別にこれは心配をかけるようなことじゃない。屋上のこの場所に立つのはいつものことだ。

それなのに、どうしてこんなに悪いことをしているような気分なのだろう。誰かを悲しませるような気がした。

さっき聞こえた声は何?家で見たドラマの台詞か何かだろうか。なぜ今それが頭で流れたのだろう。

今まではこの柵の向こう側だけが私の"自由"だったのに。この瞬間にそれが自分にとっての自由ではないように思えた。

『自由に幸せに生きてほしい』

その言葉が柵を乗り越えることに向けられた言葉ではないと思った。

ドラマの台詞に影響されるなんて、どうしたのだろう。

私は自分にあきれながら屋上から離れた。

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