忘れられた恋の物語
辛い治療を受けながら明るくいるって、どんなに大変だっただろう。入院中、私にはできなかった。

その子はきっと自分のためだけでなく、周りの人のためにそうしたはずだ。自分の大事な人たちに心配をかけないように。

私と違う病気だろうけれど、本当にすごいと思った。


「会ってみたかったな…。」


その子に会って、ほかの人には秘密で弱音を聞いてあげたかった。泣いてもいいんだよと言ってあげたかった。

自分の髪を少し手に持ち、空にかざした。


「私も病気だからわかる。やってみたいことが出来ないもどかしさも、体調が悪くなっていく怖さも。だからこの髪の毛も代わりに染めたと思って。見ててね。病気でも自由に生きて見せるから。」


病気のつらさがわかるから、顔も知らない子だけれど感情移入してしまった。これから生きたくても生きられなかった子の分まで幸せに生きていこうと思った。

< 150 / 156 >

この作品をシェア

pagetop