忘れられた恋の物語
「あなたは別に望んでないかもしれないけどね。こんな知らない人が自分の分まで生きようとするなんて。私の自分勝手だけど。」


その時、またあの声が聞こえた。


『柚茉が自分のことを自分勝手だと思うなら、俺の願い通りにしてくれてる証拠だよ。自由に思うままに出来てるってこと。』

『やってみなよ。柚茉のやりたいことは全部やればいい。』


私の名前…?どうして?

でもいくら考えても誰に言われたのか思い出せない。


「とあ…!!」


どこかから声が聞こえてその方向を見ると、小さな男の子がお母さんに名前を呼ばれたようだった。


「と…あ…。」


聞き覚えがある。


「"斗亜"。」


頬を涙が伝う。

悲しくもないのに次々と涙が溢れてきた。


「…どうして?」

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