ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
麻衣と剣崎の駆引き、そして密談
その1


その夜午後11時前…、矢島のマンションから帰宅後、剣崎は即シャワーを浴びた


自ら組み立てた今後の行動指針に矢島からの同意を得ることができたことで、どっと体の力が抜けたようだった

”ふう…、疲れが一気に出たな。何しろ、本計画の当事者となる矢島さんを説得できたんだ。これからは一気に猛進することになるし、よし、今日はシャワー浴びたら眠るとしよう”


剣崎は頭からシャワーをかぶりながら、目を閉じたままそうつぶやくと、頭の中には先般の麻衣とのやり取りがフラッシュバックされた


”それにしても、麻衣のマッドハウスを洗うという申し出は今思うと、タイムリーだったな。当初は麻衣の野郎が単にケイコと新しくできた恋人の関係をやっかんだ程度の動機だろうと見ていたが、今にして思えば、アイツは相和会自体をいじる目論見だったんだ。ふふ…、あの時の麻衣はやけに挑発気味な口ぶりだったわ”


・・・


「…いいか、お前も承知しているはずだが、会長が亡くなったからには”今まで通り”はムリだ」


『当然ですよね。これから2代目の跡目争いってことでしょうから…』


「…そう言うことだ。…ケイコはクスリを辞める気でいる。会長との約束通りな。まあ、見ている限りの分量なら抜けるだろ。それが済んじまえば、”本件”はなかったことで収められる。彼女の方はな。…それでお前の”予定”も把握しておきたい」


『その前に率直に伺います。実際、跡目は矢島さんでいけそうなんですかね。それとも、建田さんですか?』


”一瞬、剣崎さんの目の色が変わったかな”



...



「…多数派工作なら何とかなる。矢島さん2代目でな。だが、その後の組の運営となるとキツイ。要は、”向こう”からの巻き返しに対する備えが不可欠だ。その為には、あっちを押さえこめる”材料”が必要だ。その辺は慎重にならざるを得ない」


”わおー、部外者の私なんかにここまで言ってくれちゃって…。大丈夫なのって、こっちが心配しちゃうよ”


”しかし、剣崎さんのことだ。深慮の上でだろう。そうならば…、もう一つっこみだ”



...



『その”材料”、持ってるんですか?』


「…ああ。だが、十分とは言えない。向こうも打つ手は考えてるだろうしな。その先も読み込まないとならんし…」


”そういことね。剣崎さんは例のクスリの件がアキレス腱になってることを危惧してる…”


”ふふ…、好都合よ。こりゃ…”





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