妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)

22.竜の怒り

 オデルside

 賊が侵入した。
 そう報告され、すぐさまシルディアを休憩室へ誘導した。
 一人夜会会場に残ったオデルは、シルディアがいない間に閉会させるため指示を出していた。

(シルディアには悪いが、さっさと終わらせてしまおう)

 夜会の終わりを告げれば、開け放たれた扉へと参加者は足を向ける。
 社交界の非現実的な空間が好きだとシルディアは言っていた。
 だが、オデルにとって社交界は日常的な公務のため、彼女の気持ちが理解できない。

(まぁそこが可愛いんだが……。早く終わらせてシルディアを迎えに行こう)

 扉へと流れる参加者の波が少しずつ引いていく様を眺めていれば、慌てた様子の騎士がオデルの前に跪いた。

「陛下」

 青い顔をした騎士が頭を垂れる。
 彼は休憩室付近を警備していた騎士だろう。彼の衣服には交戦した形跡があった。
 その様子から、何があったか容易に想像できた。

(賊の目的は俺ではなかった、と。……シルディアにはあの侍女が付いている。生半可な賊であればアレには勝てない。戦闘民族だからな)

 シルディアのいる休憩室が襲撃されたのだろうと予想建て、努めて冷静に問いかける。

「なんだ」
「つがい様が賊に連れ去られました」

 その言葉に殺気が溢れたのは仕方のないことだろう。
 騎士の小さな悲鳴にオデルは我に返った。
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