妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)

「ちゃんと感じたようだね。今お嬢さんの体内を巡っているのが神力だよ。魔力とは別物だから覚えときな」
「魔力とは別物なの……?」

 新たな事実にシルディアは綺麗な形の眉を八の字に下げる。
 困惑するシルディアを安心させるように今度はオデルがシルディアの手を取った。
 すると先程とは対照的に冷たいものが体内を巡る。
 その上、指先から背中、足先に至るまで全身を蛇に這われるような感覚がシルディアを襲った。

「ひゃ!? なに、今の」
「それが魔力だ。魔力は人によって性質が様々で、俺はよく蛇のようだと言われている」
「先に言ってほしかったわ」
「ほら、これで魔力と神力の違いが分かっただろ?」
「……そうね」

 シルディアは自身の胸へ手を当てれば、二つの力が体内を巡っているのを感じ取ることができた。

「余談だが、魔法と妖法は相性がすこぶる悪い。だから魔法を使う者は妖精から嫌われて妖法が使えないんだ」
「……じゃあわたしがどれだけ勉強しても妖法を使えなかった理由って」
「十中八九、魔力があったからだろうね。なんだい。アルムヘイヤでは魔力について教えられないのかい」
「アルムヘイヤは妖精が最も尊ばれるからな。魔法は低俗だって言うような国だぞ?」
「そういえば忘れがちだけどガルズアースとアルムヘイヤは敵国だったわね。そもそもアルムヘイヤ生まれの人間が魔力を持っているなんて、考えつかないわ」
「それはそうかもしれないな。一応、ガルズアースにも魔力を一切持たず妖精に好かれる者が稀に生まれるぞ」
「そうなの? へぇ知らなかったわ」
「思い込みは厄介なもんだからな」

 じっとシルディアとオデルを見つめていたアリスだったが、何かを思いついたようににやりと笑う。
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