妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
「鎖に繋げば、逃げる心配もない。その上、排泄から食事、シルディアがなにをしようとする度、俺を頼らないといけないんだ。考えただけでたまらない」
「そ、そう」
「でもやらないよ」
「?」
「俺の一番好きなシルディアがいなくなってしまう」
「一番好きなわたし……?」
「先の見えない闇の中で俺に安らぎを与えてくれた、花が咲き誇るような笑顔が、消えてしまうから」
(オデルにそんな笑顔を見せたこと、あったかしら?)

 ふわりと舞った疑問は、答えが導き出される前に消えてしまう。
 なぜなら、オデルが紡いだ言葉に意識が持っていかれてしまったからだ。
 その言葉は――

「だから、愛する人間を傷つけるしか能のない竜の王の意識に、シルディアは渡さない」
「……は?」
「シルディアは俺のだ」
「ちょ、ちょっと待って。どういうこと?」
「あ、そうか。シルディアが知らないのは当たり前か。竜の王に選ばれた者のみしか知らないことだし」

 さらっと言ってのけたオデルにシルディアは頭を抱えた。

(竜の王の意識ってなに!? 竜の王は神話の存在でしょ!?)
「この話は長くなるからまた今度しようか」
「……わかったわ。それで、話が戻るんだけど、せめて少しでも痛みが紛れるようなものはないの?」
「一つだけあるよ。シルディアが手伝ってくれればだけど」
「! 手伝うわ!」
「二言はない?」
「もちろん」
「よし」

 膝に乗っていたシルディアを抱きかかえ立ち上がったオデルは、魔法で暖炉の火を消すと寝室へ足を向けた。
 されるがままになっているシルディアがどうすればいいのか問いかける。

「それでどうすればいいの?」
「シルディアは俺の傍にいるだけでいい」
「?」
「寝台を共にすることを許してくれるかい?」
「オデルの寝台でもあるのよ? 当たり前じゃない」

 可愛らしいレースの天蓋をかき分け、優しく寝台に降ろされる。
 同じように寝台に入ったオデルが綺麗な笑顔で爆弾を落とした。

「じゃあ、抱き合おうか」
「!?」
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