妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)

08.料理の隠し味は少しの狂気

 窓から差し込む陽光がシルディアの意識を浮上させる。
 部屋の眩しさに目を細め、起き上がろうとして失敗した。

(そうだった。オデルと抱き合って寝たの忘れてた)

 体に回された腕は重く、逃れることもままならない。
 寝入っていても緩まない力に、シルディアは苦笑する。

(抱き合って寝るって言われた時は純潔の危機を感じたけれど、文字通りの意味で安心したわ)

 シルディアの起床時には絶対に起きているオデルが、まだ寝ている。
 その事実が少しだけシルディアの心を高揚させた。

(今まで熟睡した事がないんだもの。もう少し寝かせてあげましょう)

 オデルはまばゆい光をものともせず寝息を立てている。
 初めて見るオデルの寝顔は、いつもより幼く見えた。
 目にかかりそうな前髪に触れれば、見た目以上に柔らかく黒絹のような触り心地だ。

(何をすればこんな肌触りになるのかしら? 寝不足のはずなのに肌も荒れていないなんて羨ましい)

 頬を撫でれば、予想以上の滑らかさに驚いた。
 柔らかなもち肌は赤子のようだ。
 時間にして一分ほどだろうか。オデルの肌を堪能し、はたと我に返る。

(わたしったら、はしたないことを……。意識のない人をベタベタ触るのはマナー違反だわ)

 手を離し、恥ずかしさからオデルに背中を向けようと身を捻る。
 ぎゅうぎゅうと抱きしめられているため、背を向けるのは骨が折れたが、なんとか反対を向くことに成功した。
 シルディアがほっと息を吐いた瞬間。
< 30 / 137 >

この作品をシェア

pagetop