妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
「そういえば、体を構成する細胞は一か月で入れ変わると言われているのは知ってる?」
「知っているわ。でもどうして今その話?」
「俺がシルディアに手料理を出す理由にも関係があるんだ」
「ますます意味が分からないわ。さっき毒見が死ぬのが嫌だって話はどこに行ったの?」

 振られた話題の意味が理解できず、シルディアは眉を寄せる。

「もちろんそれも嘘じゃないよ。でも、一番の理由は……」
「一番の理由は?」
「一か月間。俺と同じ食事をすれば、血が、肉が、君の全てが、俺と同じになるんだ。実行しない手はないだろ?」

 狂気じみた言葉に、シルディアは目を見開いた。
 しかし、皇国へ来てから向けられている重い愛情を思い出し、すぐさま衝撃から戻ってきた。

「同じ食事なら料理人が作っても一緒になるわよ」
「いいや。それは違うよ」

 ため息交じりに呟いたが即座に否定される。

「?」
「俺が丹精込めて作った食事が、シルディアを構成する全てになるのがたまらないんだ」
「……そう」

 言うだけ言って満足したのか、オデルはワゴンに乗せた食器を片付けるため厨房に向かった。
 一人残されたシルディアは胸の奥に燻ぶる温かな気持ちに困惑する。

(どこを取っても狂気を感じるような言動。でも、どうしてかしら? 嫌じゃない)

 初めて宿った感情に、シルディアは頭を悩ませるのだった。
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