ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 ディルは面食らってエミを止めようとしたものの、ドラゴンが気付く方が早かった。金色に光る眼が、エミを捉える。

『我ニ対峙スルトハ、ソコノオンナ、聖女カ!』
「はーい、ギャルだけど聖女だよ~!! エミたそって呼んで♡」
『自ラ我ヲ呼ブトハ愚カナ! マズハ、オ前カラ始末シテヤル。死ヌマデタップリ痛メツケツケテヤロウ。我ヲ封印シタ聖女ノブンマデ、苦シムガヨイ!』
「あちゃー。これ、けっこう逆恨みされてる系? 交渉しようとしたけどダメぽよだったよぉ……。あたしやっぱし交渉とか向いてないわ~~。マジぴえん」
 
 エミは悲しそうに呟くと、くるりとディルの方を振り返る。
 ちょうど昇ってきた朝日が、後光のようにエミを包みこむ。それはまるで、神々しい宗教画のようだとディルはぼんやり思った。

「あのさ、今からちょっとびっくりするようなことするんだけど……、あたしのことキラいにならないでね?」
「……誓おう。別にどんなことが起こってもお前のことは嫌いにならないと」
「……うん、ありがと」

 眩い光の中、エミの眼がどこか自信なさげに揺れたように見えた、次の瞬間。

「……――火球(ファイアボール)

 ちゅどーん、という感じの音がした。
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