ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―

聖女、倒す!

 まさかの一撃だった。
 ドラゴンの身体をエミが放った灼熱の炎が包み込む。情け容赦なく、徹底的に。

(ああ、国王の「聖女エミは危険」とは、こういうことか……)

 ディルは一瞬で理解した。

『ナ、ナンダト!? アノフザケタ聖女フゼイガ、一撃デ……! 馬鹿ナ! 馬鹿ナァアアアアア!!!』
「あ、ヤバい。なんか久しぶりに魔法つかったら、やりすぎた感……」
『ギ、ギャアアア――――ッ!!』

 ドラゴンは耳をつんざくような断末魔の叫びをあげ、首都の南北を走る運河に突っこんでいった。派手な水しぶきとともに、あたりにもうもうと白煙が立ち込める。
 あたりは静まり返った。騎士たちは生唾を飲む。
 いくら待っても、ドラゴンが川底から再び浮上することはなかった。

 こうして、伝説のドラゴンは実にあっさりと聖女エミによって倒されたのである。

 そこにいる誰もが呆然としていた。伝説のドラゴンと対峙するとなれば、ある程度の損害は免れないと覚悟していたからだ。
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