ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 しかし、実際はどうだろう? 異世界からやってきた聖女が、ものの数秒足らずで伝説のドラゴンを討伐してしまった。首都は無傷。損害と言えば、ドラゴンが行く先々で平らげた家畜くらいのものである。

 朝日の光のなかの街はあっという間に静寂を取りもどし、刹那――、

「ば、バケモノめ……」

 腰を抜かして一部始終を見ていた第一王子の口から飛び出たのは、明確な嘲りの言葉だった。
 その言葉を聞いたサクラが、怒りで顔を真っ赤にさせる。

「ちょっと、アンタ! なんて失礼なこと言ってるのよ! エミたそは、この国をまた救ってくれたんだよ!? それなのに、バケモノって!」
「お前も見ただろ、あの圧倒的な力を! あれはどう考えてもバケモノだ! あのドラゴンは、初代の聖女が7年も戦ったすえ、ようやく封印したという伝説のドラゴンだぞ!? それを、コイツは一撃で倒しやがった。強すぎるんだよ! このまま放っておけば、王国の脅威になりかねない!」
「エミたそは、強い力を悪用するような子じゃない!」
「ハッ、どうだかな! 異国人の聖女なんて、百年に一度の災禍が終われば用済みだ!」
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