ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 時々心配そうにメイドが寝室を覗き、ディルの世話の交代を申し入れたが、エミは頑なにディルのそばから離れない。少しだけ開けた窓から、春の風が気まぐれに入ってきて、エミの金髪を揺らした。
 太陽が高くなるにつれ、ディルは何度か煩わしそうに低く唸り、寝返りをうっている。どうやら、熱が上がってきたらしい。
 ディルの額に浮かんだ汗を濡れたタオルで拭いたエミは、心配そうな顔をする。

「けっこう熱が高くなってきたね。しんどくない? 大丈夫?」
「これしきであれば、過剰に心配する必要なはいだろう。幼い頃はもっと高い熱がでて、何日もうなされたことがある……」
「小さい頃、ディルは身体が弱かったの?」

 意外そうにエミは訊く。ディル自身が、子供時代について語るのはかなり珍しい。
 熱にうなされているディルはエミに訊かれるままに、子供時代について語りはじめる。

「ああ。どうやら生まれたときから、私は身体が弱かったらしい。ソーオン家の三男として、両親からは騎士になるよう期待されていた。しかし、幼心に騎士になれば確実に死ぬだろうと思ったものだ。だからこそ、必死で勉学に励んだ。両親はそれを苦々しく思っていたようだが……」
「ええっ、ご両親はディルが勉強するのがイヤだったってこと? どうして?」
「長男や次男はともかく、病弱な三男を食わせていけるほど、ソーオン家は裕福ではない。おおかた、騎士団にでも送って口減らしをしたかったのだろう」
「そ、そんな……」

 さらりと恐ろしいことをいうディルに、エミは絶句する。
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